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RoHS指令と電池指令、EU新電池規則案について

RoHS指令と電池指令、EU新電池規則案 安全性・規格



リチウムイオン電池に対して、RoHS指令に準拠しているかと問われることがあります。
RoHS指令とは何か。電池指令との関係はなにか、2020年12月に提案されたEUの新電池規則案は、リチウムイオン電池を含むバッテリーにどのような影響があるのでしょうか。


※2024年から順次導入されるEUの新電池規制については、「EU新電池規則の導入で何が変わるか~2024年より持続可能案件が適用ご覧ください。

RoHS指令とは何か



RoHS(ローズ)は、Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipmentの略です。

電気・電子機器(EEE)に含まれる有害物質の使用を制限するEUの規則で、目的は環境と人間の健康を守る事です。European Commission(EC:欧州委員会)が規定しており、日本語では特定有害物質使用制限と訳されています。

EUの法律であるため、日本国内において製造販売する製品は対象外ですが、環境への配慮によりRoHS準拠を求められる場合もあります。

European Commission(EC:欧州委員会)
Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment (RoHS)
https://ec.europa.eu/environment/topics/waste-and-recycling/rohs-directive_en

RoHSの歴史


RoHSは2006年7月に施行され(RoHS1)、2011年7月に大きく改正発効されました(RoHS-RecastまたはRoHS2)。
RoHS2にはCEマーキング指令が含まれており、CEマーキングにはRoHS準拠が要求されています。また適用除外されていたカテゴリ8(医療用機器)、カテゴリ9(監視・制御機器)が含まれ、「その他の電気・電子機器」がカテゴリ11として追加されました。
改正RoHSと呼ばれているのは、この2011年のRoHS2です。


2015年、2019年に制限物質の追加やカテゴリ適用が追加され、計10物質11カテゴリが下記のとおり規制の対象とされています。

RoHSの禁止物質10 

No.指定されている有害物質基準
10.1%以下(1,000ppm)
2水銀0.1%以下(1,000ppm)
3カドミウム0.01%以下(100ppm)
4六価クロム化合物0.1%以下(1,000ppm)
5ポリブロモビフェニル(PBB)0.1%以下(1,000ppm)
6ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)0.1%以下(1,000ppm)
7フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)0.1%以下(1,000ppm)
8フタル酸ブチルベンジル(BBP)0.1%以下(1,000ppm)
9フタル酸ジブチル(DBP)0.1%以下(1,000ppm)
10フタル酸ジイソブチル(DIBP)0.1%以下(1,000ppm)

RoHS対象製品11カテゴリ

No.対象製品カテゴリ
1大型家庭用電気製品
2小型家庭用電気製品
3IT機器及び遠隔通信機器
4民生用機器
5照明機器
6電動工具
7玩具、レジャー、スポーツ機器
8医療用機器医療用機器
体外診断用医療機器
9監視・制御装置監視及び制御装置
工業用監視・制御装置 
10自動販売機
11上記カテゴリに入らないその他の電気・電子機器

RoHS 法的義務の対象者

RoHS2(改正RoHS)から、生産者のみならず、サプライチェーンに関わる輸入者、販売者それぞれに義務が課されることになりました。
生産者には、製品のトレーサビリティ、評価実施、文書による根拠の保管、維持管理、不適合のリコールなどの厳しい法的義務が課されています。


リチウムイオン電池とRoHS

さて、リチウムイオン電池にRoHSはどう影響するのでしょうか。

結論からいうと、電池単体はRoHS指令の対象にはなりません。

カテゴリ11「その他の電気・電子製品」として、電池が組み込まれた製品が対象になり、それに付随して、例えばRoHS準拠のはんだを用いているか、内部構成品の有害物質について調査を受けることがあるかもしれません。
しかし、機器組み込みに使用されていても、電池自体にはRoHSは原則的に適用されていないのです。

RoHSより、電池指令が優先して適用されているからです。

「電池」の定義:電池工業会の解釈では下記となります。

改正WEEE指令、改正RoHS指令及び電池指令で定義される「電池」とは、従来から、法的に、取り外し容易化、回収及びマーキングの義務を課せられている電池単位のものを言う
* 改正RoHS指令:電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令 (2011/65/EU)
* 改正WEEE指令:廃電気・電子機器指令 (2012/19/EU)

https://www.baj.or.jp/battery/recycle/recycle09.html

RoHSマーク

マークの公式デザイン規定はありません。

中国RoHS

中国にもEUのRoHSとほぼ同じ法律があり、一般に中国RoHS(China RoHS)と呼ばれています。
詳しくはこちらに記載しています。

電池指令および2020年EU新電池規則案

電池指令とは、EU Battery Directiveの日本語訳です。

欧州委員会(EC)と欧州連合(EU)によって布令されました。
一次電池、二次電池、蓄電池も含むすべての電池・蓄電池、廃電池・廃蓄電池に対する有害物質規制およびリサイクル要求です。単体か、機器組込かを問いません。目的は環境への有害物質放出の防止です。
現行の電池指令は、(2006/66/EC)版で、日本では新電池指令とも呼ばれています。2013/56/EU版で一部改定がありました。

EU新電池規則とは何か


2020年12月、欧州委員会は、電池指令に代わる新たな電池規則を提案しました。

資源の浪費と環境負荷を低減する循環経済のため、EU市場における電池がライフサイクル全体にわたって持続可能で安全であること、トレーサビリティ、循環性に関する保証の法的枠組みを目的としています。


特に、ライフサイクル全体におけるCO2排出量=カーボンフットプリントの申告が大きな課題になります。これは、EUの成長戦略である環境政策の方向性が大きな影響を与えており、今後、グリーンディール政策により電池製造に関する法的規制が強まっていく事が予測されます。
電池指令(Directive)から、電池規則(Regulation)になると、これまで各国内で運用していたものが直接要件となり、事業者にとってより厳しくなるのは避けられないでしょう。

New EU regulatory framework for batteries
Setting sustainability requirements
https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2021/689337/EPRS_BRI(2021)689337_EN.pdf

電池指令の規制物質とリサイクルマーク

指定されている有害物質 基準
カドミウム含有量0.002重量%(20ppm)
水銀含有量0.0005%(5ppm)

EU電池指令では、上記の基準を超える電池は上市することができません。


また、製品のラベルマーク表示に関しては、
・電池、機器本体または包装に、ゴミ箱に×のアイコン「クロスドアウトダストビンシンボル」(crossed-out dustbin symbol)を表示すること。
・適用除外製品において、0.004%を超える鉛、0.002%を超えるカドミウム、0.0005%を超える水銀を含む電池類には、「Pb」「Cd」「Hg」の化学記号を図に追加することが義務付けられています。

EUの廃電気・電子製品に関するWEEE指令との関係についてはこちらをご覧ください。