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超急速充電(15分で満充電)が変える未来

コラム

 2022年3月4日、電子機器デバイスメーカーのOPPO社が、『最短15分で0%から100%まで充電する技術開発を終え、急速充電の業界新標準を設定した』と発表があった。
このスマートフォン向けの超急速充電による技術革新が与える影響は図らずも大きい。従来の充電性能と比べて考察してみる。


従来の充電技術
 小型デバイス向けのリチウムイオン電池は、低レートタイプが主流となっており、充電レートはせいぜい0.2C~2Cあるいは3C程度となっていた。従来までの機器設計の観点では小型デバイスの搭載スペースにいかにエネルギーを詰め込むかが開発ポイントとなっており、どれだけ長い時間使用できるかを焦点としたためである。リチウムイオン電池製品が一般消費者に普及し始めたのは、90年代後半から2000年あたりの携帯電話から始まり、以降は様々なデバイスに浸透してきが、充電に2時間かかる(デバイスによっては5時間)のが’当たり前’として受け入れられ続けている。
この背景には、リチウムイオン電池の開発現場では、安全性・長寿命化・エネルギー密度重視の開発が進められてきており、できる限り長時間使いたいというデバイスメーカーの機器設計寄りの開発を行ってきたためである。そもそも充電時間の短縮についてはメーカー側では検討されておらず(あるいは優先順位が低い)、適切な充電方法での使用を順守しなければならず充電時間の短縮等を選ぶことができなかった。 

多様性に富んだ若者世代
 しかしながら、ここ近年の搭載ICの消費電力の軽減や、ユーザーの利用シーンの変化を受けて風向きが変わりつつある。
例えば、都内近郊のコンビニや国内線旅客機、地下鉄などの電車内ではUSB充電ソケットが常備され、コンビニやショッピングモールでのモバイルバッテリー貸出し、一部のコンビニではモバイルバッテリーのサブスクまで導入されている。30代以上の世代ではなかなかなじみがないであろうサービスがお金を払って利用されている。
 この背景にあるのは、まさに充電時間とデバイス利用時間の心理的な部分、特に『充電に時間が掛かる問題』に訴求し成功を収めているものと考える。
また、若者世代(中高生~20代)では、必要以上にものを持たない傾向にあり、モバイルバッテリーの購買意欲が他の世代と比べ低いというデータもある。
 最近驚いたのは、YoutubeやNetflixなどの動画サービスの視聴で、倍速で見る若者が断然多いようである。また、ドラマの最終話を見て、それから第1話から順番に見るのも一部の若者世代にいるようだ。40代の筆者からすると変態極まりないと思うのだが、私も固定観念に縛られている結果なのだろうと価値観の違いに気付かされてしまった。

急速充電の開発動向
 近年、小型電池の急速充電技術の見直しが始まってきている。TWS市場ではイヤホン用電池向けに1C~2C充電(満充電まで45分~1時間程度)が標準的な充電になり、電子タバコにおいてもより速い急速充電の需要が高まりつつある。
TWSも電子タバコも嗜好性の高いデバイスではあるのだが、デバイスそのものの性能面での差別化が難しくなり、より使い勝手の良い方法を電池に求め、各社模索しているものと考えられる。
 たとえば電子タバコを例に挙げると、1本吸い終わって次吸うまでに15分掛かっていたものが、15分→3分になると利用シーンを大きく変えることができる。TWSにおいても、充電し忘れてしまったために通勤・通学の時間を音無しで過ごすことになってしまった経験を持つ人も多いのではないかと考える。超急速充電を搭載したTWSであれば、歯を磨いている間の’たった5分’の充電で2時間再生できるようになり、通勤・通学で嫌な時間を過ごすことも無くなってしまう。

 ビジネスシーンにおいてはどうだろうか。
工場内の無線やピッキングサービス等では、ハンディタイプのモバイル端末を利用しており、一回の充電で長時間使えるタイプの電池を採用している。容量帯は1000mAh~3000mAhが多く、使用可能時間、サイクル劣化後の使用可能時間、電池スペースと重量のバランスを見て設計されている。電池の使用限度としては、平日5日の使用を2年間、およそ500サイクルを目途とすることが多い。
超急速充電を採用した場合(15分で0%→100%満充電)、昼休みまでの半日業務、午後の業務を満足する容量で良く、従来の容量の半分以下、重量・スペースも半分以下となる。使用する機器によっては腰に引っ掛けたり、ピッキングカートに搭載したりと様々であるが、機器そのものの重量ダウンは現場作業者から喜ばれるのは必至となるだろう。


超急速充電可能なリチウムイオン電池の特徴
 筆者はここ数年にわたって、10C~15C充電が可能な小型リチウムイオン電池の開発を目の当たりにしており、メリット・デメリットを理解しているつもりである。商業ベースに乗せるにはもう少し時間が掛かりそうだが、間違いなく2年以内には市場リリースされることになるでしょう。ただし、現実を直視するとメリット・デメリットを十分に理解頂ける機器メーカーに限定されるでしょう。

メリット
 ・セルの内部抵抗が通常品と比べ、非常に小さい
 ・サイクル寿命が大幅に延びる
 ・0℃でも1C以上で充電できる
 ・大電流放電が可能

●デメリット
 ・エネルギー密度は従来と比べて80%程度
 ・大電流放電も可能
 ・充放電時の内部発熱
 ・充電時のDC/DCにおける発熱

超急速充電可能なリチウムイオン電池を使いこなすには
 安全に電池を使用するために、①充電時の発熱を抑える、②電池の冷却機構の工夫、③環境温度による充電レートの制御が重要になります。
 ①充電時に起こる発熱は2種類(電池そのものの内部発熱、充電電圧制御のDC/DC)あり、最大充電電流と継続時間による許容温度を設定しなければなりません。例えば10Cで充電する場合にはCC充電で3分~4分、CV充電で10分程度となり、CC充電での発熱継続時間は4分程度となります。これを12Cや15Cとする場合、発熱量は電流値の二乗に比例しますがCC充電時間は短くなるため、瞬間最高温度が何度以下とするかがポイントとなります。
 ②、③については具体的な内容となるため割愛させて頂くとして、もしご興味ありましたら、超急速充電可能なリチウムイオン電池をご紹介致しますので、本サイトのお問合せよりコンタクト頂ければと思います。 





今年はキノコが豊作でした
 先週末に長野県を訪問し、タマゴタケ、シロヌメリイグチ、ナラタケ、ナラタケモドキ、ヌメリイグチを採ることができました。旬の食材は美味しいですね。
秋が少しずつ訪れてきているようです。このサイトに訪問した方は電池の開発作業をいったん止めて、秋の食べ物を探しに行ってみてはいかがでしょうか。

タマゴタケ
ナラタケ
シロヌメリイグチ、ヌメリイグチ
さっとお湯で通したあとのキノコたち

くれぐれも毒キノコには気を付けましょう。

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