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リチウムイオン電池のSoC、SoH、DoDとは~サイクル寿命との関係

用語・市場・評価

バッテリーの状態を管理するにあたり、充電・放電されるエネルギー量と総エネルギー量の把握はとても重要です。それらを表す用語である、充電率SoC、放電深度DoD、健全性SoHを簡単に解説します。繰り返し充放電の回数=電池のサイクル寿命とも深い関わりがあります。

SoCとは?

SoCとはバッテリーの充電率(State Of Charge)です。
満充電状態を100%として、どの程度充電できているかを指します。

SOC=残容量/満充電量×100(%)

SoC70%の場合、総エネルギーの70%が使用可能であることを意味します。総エネルギーは電池劣化により減少するので、同じ電池のSoC70%は常に同じ容量を意味するとは限りません。

リチウムイオン電池の劣化要因と診断方法でもふれましたが、
正確なSoC管理はバッテリーの過充電や過放電を防ぎ、寿命を維持するのに必要不可欠となります。
また、リチウムイオン電池の航空輸送時には、安全性担保のためSoC30%の規制遵守が求められます。

DoDとは?

DoDとは放電深度(Depth of Discharge)です。
バッテリーで使用されたエネルギーの割合を示し、DoD値が高いほど使用されたエネルギーは多くなります。DoDはバッテリー残量とも関係します。
SoC100%からSoC80%まで放電した場合、そのサイクルのDoDは20%になります。

放電深度が深いとは、一度に大量の放電をすることです。100%の放電深度で電池を使い続けると一般に電池への損傷が大きくサイクル寿命は短くなり、放電深度が浅いとサイクル寿命は延びますが一度に使用できるエネルギーと時間は短くなります。

SoHとは?

SoH(State of Health)電池の健全性=劣化状態は、電池初期状態からの満充電割合を示します。

SOH=満充電容量/初期の満充電量×100(%)

初期満充電容量が1000mAhである電池の満充電容量が700mAhになっていた場合、SOHは70%です。
SoHが70%の場合、初期状態の70%容量が満充電状態になります。ですから、SoH70%のSoC70%は初期満充電容量のSoC49%に相当します。
スマホなどを使い続けて電池が劣化すると、100%充電からすぐパーセンテージが下がってしまうのはこのためです。

電池のサイクルとは?

サイクルとはバッテリー使用時における充電と放電です。
電池を充電し、放電してエネルギーを使用する、その繰り返しが可能な電池が二次電池です。充放電の繰り返しサイクルと呼び、1回の充放電が1サイクルに相当します。サイクル可能数が多い電池ほど繰り返して使える寿命が長く、サイクルに対する残存容量が多いほど長く使える電池ということになります。
リチウムイオン電池を使い続けると電池の満充電値は初期より下がり(SoH)、使用できる電池エネルギーの割合が減り(SoC)、放電深度(DoD)の深化速度も早まり、使うほど劣化が加速します。一度に吸い込める酸素と吐き出せる酸素の量が減りつづけ、息が止まってしまうような状態です。


スペックの目安として例えば「500サイクルで満充電容量が初期の80%」であればサイクル寿命が比較的よいといえます。バッテリー寿命は一般的に充放電サイクル500回~1000回が目安とされています。スマホやEVなど年単位で頻繁に充放電するデバイスはサイクル寿命が重要であり、基本的には電池価格にも反映されます。

サイクル寿命を延ばすには(開発設定のノウハウ)

電気自動車の駆動用バッテリーは長寿命化に必要な設定を行っています。
満充電電圧の設定を低くし、実際のバッテリー性能の8割程度をサイクルすることで、電池の長寿命化を行います。フル充電が実際は100%ではなく80%程度になり、電池スペックの80~30%のサイクルが自動的に行われることにより、場合によっては10倍ものサイクル寿命が得られます。
長寿命化されたEV車のバッテリーは、リサイクルで家庭用の蓄電池にも使われるほどです。
また、充電方法ではCC充電は性能を引き出し、CV充電はサイクルに効果的です。

サイクル寿命を延ばすには(ユーザー設定)

ユーザーがバッテリーを長持ちさせるためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  1. 高速充電を頻繁に使わない:電池残量が適度に残った状態で充電する
  2. 電池残量を20〜80%の間で維持する:高電圧・高温化を抑える
  3. 過度な高温・低温を避ける:極端な温度は電池劣化の原因に
  4. 夜間充電の回避:100%まで充電したまま長時間放置しないように注意する
  5. 充電しっぱなしで使用しない:デバイスの電池制御が崩れ寿命が短くなる

スマートフォンではバッテリー残量が20%~80%の範囲内で充電を行うのが理想的とされます。電池残量を80%以下に維持することが、バッテリーの長寿命化安全性向上に効果的です。一部のスマートフォンでは、バッテリーの最大充電量を80〜85%に制限する機能が提供されています。