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リチウムイオン電池のセパレータとは~役割と意味

用語・市場・評価

リチウムイオン電池の主要材料(正極・負極・電解液・セパレータ)のひとつであるセパレータについて、簡単に解説します。

セパレータの意味と役割

セパレータは、英語の”separator” です。分離器、セパレートするものという意味です。

「セパレータ」なのか「セパレーター」なのか? 

普通に英語読みすればセパレーターですが、電池では「セパレータ」と記載する場合も多くあります。どちらが正しいという規定はなく、どちらも用いられています。

セパレータは、電池の短絡(ショート)を防ぐため、帯電した正極と負極を隔てる材料です。

不織布や、ポリプロピレン、ポリエチレンを積層したポリオフィレンなど多孔質膜が主に用いられます。

セパレータは、導電性がなく、正負極を絶縁しながらも、正極と負極間を遊動するイオンを通過させる役目があります。

そのため、絶縁しつつ、イオンが通る程度の細かい孔が必要です。
微多孔、つまり、非常に小さな穴が多数あいていて、イオン移動の媒介である電解液が含侵(がんしん)し、そこをリチウムイオンが通ります。

充電時にはリチウムイオンは正極(カソード)から負極(アノード)に移動し、放電時には逆に移動します。



セパレータに求められる性能

耐酸化性・耐還元性
セパレータは、正極と負極に挟まれているので、双方に対応した性能が求められます。
リチウムイオン電池は、酸化還元反応を繰り返しています。
正極面には、高電圧でも安定した耐酸化性。負極面には低電圧でも安定した耐還元性が求められます。つまり、高電位に耐えられる性能です。



シャットダウン機能
シャットダウン機能は、リチウムイオン電池が短絡(ショート)などで異常発熱を起こした時に、セパレータが融解して微細孔をふさぎ、イオンの流れを遮断するヒューズ機能です。
電池出力を止めることで、万一の際の安全性を高めることができます。

しかし、樹脂系のセパレータでは、高温になりすぎるとシャットダウン機能を超えてセパレータ自体が収縮して孔が広がり、逆に熱暴走する可能性があります。
そのため、表面にセラミック層の塗工など耐熱性を高める工夫がされています。

自己放電制御
電池は、充放電を行っていない状態でも微量の化学反応が起きています。これを自己放電といいます。
セパレータの孔が大きいと、イオンの移動が容易になりすぎるため、自己放電は大きくなります。

内部抵抗
逆に、セパレータの孔が小さく、イオンの移動が難しいと、内部抵抗が高くなります。

厚みと強度
電池のエネルギー出力を高めるため、セパレータの薄さが重要です。一般に10~25μm。10μm以下のセパレータもあります。しかし、薄くなりすぎると自己放電や短絡の危険も増加します。
また、伸びを防ぐため、引張強度も必要です。



層とコーティング

かつては単層のセパレータが用いられていましたが、近年は3層セパレータが多く採用されています。
2層のPP(polypropylene)の間にPE(polyethylene)が挟まれた3層構造PP/PE/PPの場合、PP層は155℃で溶融し、PE層は130℃で溶融するため、シャットダウンを有効に行います。

PP/PE/PP イメージ図



表面にセラミックコーティングされたセパレータは、さらなる高温に耐えられます。
フッ素系化合物コーティングやアラミドコーティングなど、低温でのシャットダウンと高温での熱暴走防止の両立を高いレベルで実現させる技術も進んでいます。

リチウムイオン電池の安全性、高出力、長寿命はセパレータの性能に大きくかかわっています。



多孔性とサイズ

セパレータの穴、つまり多孔質膜の孔の大きさや密度は、イオンの通路ですから、電池性能に影響を与えます。
電解液は通信回線のようなものと解説しましたが、リチウムイオンはデータではなく大きさがあるため、通路が必要です。その通路がセパレータの孔です。



セパレータにおける、孔の径(大きさと平均値)、気孔の数(気孔率)、それらがどのように分布し、正極側から負極側までどのようにつながっているか(貫通孔の屈曲度/曲路率)など複数の条件があります。

孔の構造により、イオンがセパレータを通りぬけやすいほど、内部抵抗は下がり、電池の出力密度、サイクル寿命は向上します。一方で、自己放電量や強度は下がり、微短絡の危険性は増加します。


セパレータメーカーのシェア

2022年の経産省資料によると、セパレータの世界市場規模は51.3億ドル。
日系企業は品質面で優位を保っていますが、中国勢がコスト面に加え、品質面でも追い上げています。

市場規模:51.3億ドル
①上海エナジー 20%
②旭化成 14%
③SK ie technology 10%
④東レ 9%

シェア:日系29.3% 中国系62.2%(2020年)

日系セパレータメーカーには他に、三菱製紙、帝人、宇部興産などがあります。

セパレータはリチウムイオン電池のメイン材料の一つです。日系メーカーの材料は安全面や品質ではリードしていますが、生産性向上などによるコストでの競争力が求められています。



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