リチウムイオン電池の輸送・梱包ガイド(2025年1月変更)
IATA規定の2025年1月1日施行の変更、特別規定A88(試作品電池の輸送)を追加しました。
2023年1月1日施行IATA DGR 64版改定 主要変更点について詳しくはこちらをご覧ください
リチウムイオン電池の輸送規制・梱包・出荷ラベル、SOC、守るべき基準について
リチウムイオン電池は輸送時に危険を伴うことがあります。
形態や容量の条件により危険物として扱われるため、細かい規定があり、順守が義務づけられています。
主に国際航空輸送の基本的な規則について記載します。
リチウムまたはナトリウムイオン電池ハザードラベルの名称になります。
国際輸送
リチウムイオン電池は、国連勧告でクラス9に分類され、国連番号UN3480(機器同梱、機器組込の場合はUN3481)が与えられます。
適切に梱包・輸送をしないと、発熱、発火等の原因になるなどの危険があります。
そのため、Wh、個数、形態などにより異なった安全規制が適用されています。
規則が変更されれば対応を変える必要があり、安全性を担保するための厳密な対応が求められます。
国連勧告輸送試験 UN38.3
UN38.3は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、ナトリウムイオン電池の国際輸送に必要な安全性認証試験です。
航空、海上、鉄道輸送において求められます。
試験内容はT1からT8の8種類があり、すべてに合格することが必要です。
T1からT5は同一電池で実施し、T7は組電池、T8は単電池に適用されます。
航空輸送
リチウムイオン電池を国際便で空輸する場合は、国際航空運送協会(IATA)が発行する規則が、適用される出荷についての一般的な基準となります。
さらに、仕向国による輸出入制限や国際規制が適用される場合もあります。
2025年1月1日発効 IATA変更内容
2025年1月1日より、IATA危険物規則書(DGR)第66版及びリチウム電池船積規則書(LBSR)第12版が適用されます。
NEW 変更点
・ナトリウムイオン電池の追加(Sodium-ion with organic electrolyte)
新しいUN番号が付与されます。PI規定は各リチウムイオン電池とほぼ同じ。
ナトリウムイオン電池 単体(UN 3551)PI976
ナトリウムイオン電池 機器同梱(UN 3552)PI977
ナトリウムイオン電池 機器組込(UN 3552)PI978
ナトリウムイオン電池で駆動する車両(UN 3558)
リチウム電池マークはナトリウムイオン電池にも用いられ、バッテリーマークと名称変更。
クラス9ラベルはリチウムまたはナトリウムイオン電池ハザードラベルと名称変更します。
・機器同梱、機器組み込みのリチウムイオン電池、および、リチウムイオン電池を動力源とする車両を航空輸送する場合、定格容量の30%を超えない充電状態であることを推奨。
これまで電池単体(PI965)のみだったSOC30%以下規定が、機器同梱(PI966)にも適用されます。
2025年に推奨、2026年にWh定格が2.7を超える電池に義務付けられる予定です。機器組込(PI967)ではSOC30%または表示バッテリー容量が25%を超えないことが推奨されます。
IATA 2025 Lithium Battery Guidance Document
https://www.iata.org/contentassets/05e6d8742b0047259bf3a700bc9d42b9/lithium-battery-guidance-document.pdf
introduction: https://www.iata.org/contentassets/b08040a138dc4442a4f066e6fb99fe2a/dgr-66-en-significant-changes.pdf
2022年1月1日発効&2023年1月1日発効 IATA変更点と梱包基準
リチウムイオン電池に関わる変更
2022年 IATA危険物規則書第63版(GDR) におけるリチウムイオン電池に関わる大きな変更点は
リチウムイオン電池単体の単電池、組電池におけるSectionⅡの廃止です。(PI965・UN3480)
小型単電池、組電池はSectionⅡとして区別されていましたが、 Section ⅠBの規定に置き換えられました。
2023年 IATA危険物規則書第63版(GDR) でリチウムイオン電池に関わる変更点は、
包装基準(PI)965:UN3480、リチウムイオン電池単体の単電池、組電池におけるSectionⅠBの外装箱に3mの積み重ね試験が追加されたことです。
また、PI966, PI967のSectionⅡをオーバーパックに入れる場合はすべてのパッケージをパックに固定する必要があります。
航空輸送の梱包基準 PI965,PI966,PI967
電池単体(単電池・組電池)の場合 UN3480 PI965(2025/1/1)
※モバイルバッテリー(Powerbank)や他の機器に電源を供給するバッテリー(smart luggage = battery used to power itself or to recharge other devices)は、電池単体の性質が強いため、PI965に分類されます。
※単電池=セル、組電池=バッテリーです。1S1Pはバッテリー=組電池です。
機器同梱の場合 UN3481 PI966(2025/1/1)
機器組み込みの場合 UN3481 PI967(2025/1/1)
月額料金なし、買い切り型WiFiサービス☆最短で申し込み翌日にお届け・受取後すぐ使用可※リチウム金属電池の輸送規定(UN3090 PI968, UN3091 PI969,UN3091 PI970)は、リチウム金属含有量により基準があり、上記とは異なります。
リチウム金属電池の輸送・梱包ガイド
各種ラベルのリチウムイオン電池、リチウム金属電池の適用やサイズ、添付ルールはこちらでご案内しています。
ポイント
フォワーダーにより、単電池は輸送不可、仕向け地の制限など対応が異なるため、輸送時は利用する船会社の規定に従ってください。
IATA規制は更新されるので最新情報を確認してください。
FedEx
出荷したいリチウム製品を選択すると、関連する貨物情報を確認できるウェブツール
包装基準、必要書類、必要となる容器とラベルが表示されます
https://www.fedex.com/ja-jp/shipping-guide/pack/lithium-batteries.html
FedEx 2022年12月付けの「よくある質問」
https://www.fedex.com/content/dam/fedex/apac-asia-pacific/downloads/fedex-lithium-batteries-faq-ja-jp.pdf
JAL Cargo(2022 年 1 月からの日本航空における危険物取扱について)
https://www.jal.co.jp/cms/jalcargo/headline/ja/pdf/JALCARGO-21-023%202022%E5%B9%B41%E6%9C%88%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8D%B1%E9%99%BA%E7%89%A9%E5%8F%96%E6%89%B1%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf
ANA Cargo IATA航空危険物規則書第63版(DGR)改定に伴うご案内(2021年12月20日)
https://www.anacargo.jp/ja/news/iata63dgr.html
DHLエクスプレスのリチウム電池ガイド(2022年1月)
https://mydhl.express.dhl/content/dam/downloads/global/en/lithium-batteries/dhl_express_lithium_battery_guide.pdf.coredownload.pdf
UPS 電池の梱包・出荷ガイド(有効日:2019年5月)
https://www.ups.com/assets/resources/webcontent/ja_JP/pack_ship_batteries.pdf
郵便局国際宅配便条件表
https://www.post.japanpost.jp/int/UGX/lithium.pdf
SOCとはなに?
SOCとはState Of Chargeのことです。充電率を意味します。
2016年4月から、IATAの規則により、リチウムイオン電池の安全な輸送のためSOC30%の規制が導入されました。2025年からは適用PIの範囲が拡大します。
リチウムイオン電池をPI965、PI966で輸送する場合、SOCが定格容量の30%を超えてはならない。PI967にも勧告する。
航空輸送のみで、海上輸送および陸上輸送には適用されません。
とはいえ、危険性を考えると、いずれの場合もSOC30%にしておいた方が無難といえるでしょう。
SOCを確認する場合は、電圧が基準となります。
充放電カーブで容量が30%以下になる電圧範囲に調整するということです。
SOCの考え方には明確な定義がないため、数値に関してはメーカーの判断にゆだねることになります。
航空輸送に際してはSOC30%となっている(The Lithium ion batteries are at 30%SoC or les.)旨を記載した書類が必要になります。
安全データシート(SDS、MSDS)、該非判定書
SDS(Safety Data Sheet)、MSDS(Material Safety Data Sheet)」を提出してください、という文言をみることがあります。
SDS、MSDSは、安全データシートと呼ばれる、危険物質の情報、取扱に関する情報を記載した書類です。
決められた内容にしがたい、非常時の際の連絡先、対処などを記載します。
航空輸送では、輸出規制の対象となる貨物ではない事の「非該当証明書(該非判定書)」が必要になる場合もあります。
SDS、MSDS、非該当証明書は、いずれも該当物に最終的な責任を持つ、製品メーカー・輸送責任者により作成・発行されます。
危険物申告書(DGD:Dangerous Goods Shipper’sDeclaration)
航空輸送基準のPI(Packing Instruction)965,966,967のSectionの中で、Wh、個数、重量制限の大きなものには、危険物申告書の添付が義務付けられます。
IATA危険物規則(DGR:Dangerous Goods Regulation)に従って貨物が梱包され、ラベルが付けられ、申告されたことを証明する書類を作成し添付します。危険物申告書は危険物貨物取扱資格保持者が作成する必要があります。
署名は責任者である荷送人もしくは指定代理人が行います。
記載例はこちらです。
IATA: DG Shipper’s Declaration (DGD) and e-DGD 危険物申告書フォーマットのダウンロード
https://www.iata.org/en/programs/cargo/dgr/shippers-declaration/
オープンフォーマットとカラムフォーマット/フィル不可・可能の4種類がありますが、Column format(fillable)が便利かと思います。
リチウムイオン電池の海上輸送
海上輸送は航空よりも大量の電池輸送に適しています。
コンテナ貸切(FCL)か混載(LCL)により手続きが異なります。
IMDG-Code( 国際海上危険物規定 The International Maritime Dangerous Goods Code: IMO 国際海事機構が危険物の個品輸送に関して定めた規則)に従うことが求められます。
梱包に関しては航空輸送の方が厳しいため、同等であれば基本的に問題ありません。充電率の制限はありませんが、将来的には制限が行われる可能性があります。
また、特別規定SP188の要件を満たす場合は、危険物に該当しません。
SP188 船舶による危険物の運送基準等を定める告示 別表第一備考 10 (2021年1月1日施行分)
https://www.nkkk.or.jp/transportation/qa/pdf/201901/qa02_4.pdf
ポイント
海上輸送は航空輸送より時間がかかります。コンテナ積みの場合、高温が電池品質に影響を及ぼす可能性があり、夏場の長期にわたる輸送には注意が必要です。
日本国内輸送
国内のリチウム電池輸送を規制する統一された法規は今のところないかと思います。
各輸送会社の適用条件がありますので、それに従うことが必要です。陸送より航空の方が危険のため、強く制限されます。
UN38.3を取得し、UNカートンを用いるなど、国際輸送準拠であれば航空・陸送いずれも問題はないと考えられますが、最終的には荷送人と運送会社の判断に委ねられるかと思います。
消防法上では、リチウムイオン電池の輸送というより、蓄電池設置についての規制があり、電解液量を基準として危険物としての規制が運用されています。
※2023年2月15日、総務省はリチウムイオン蓄電池を大量に保管する際の規制を緩和する方針を示しました。十分な性能のスプリンクラーがあり、適切な保管方法ができるなら、各種制限を撤廃しても安全性が確保できるとの判断によります。
屋外に設置するリチウムイオン蓄電池についても、JIS規格に準拠しているなどの要件を満たすなら保安距離や保有空地の制限を緩和する。他にも車載電池や電解液の扱い、他の荷物との同時保管などに関する規制も緩和するとしている。
msn news
リチウムイオン電池をゆうパックで送る際の注意点
https://www.post.japanpost.jp/question/345.html
ヤマト運輸(短縮URL)
https://bit.ly/3viUT0t
試作品、サンプル電池の輸送(特別規定A88)
UN3480の特別規定A88
試作品のリチウム単電池及び組電池又は、生産量の少ないリチウム単電池及び組電池であって、国連試験基準マニュアルの試験要件に従って試験されていないものは、国土交通大臣の輸送承認を要する。
となっています。
また、A88の承認があっても、受託しない航空会社もあります。
FedFxのガイドPDFには要請先のメールアドレスが掲載されています。
リチウムイオン電池(リチウムポリマー電池を含む)を発送する場合(2024年1月1日より有効)
https://www.fedex.com/content/dam/fedex/apac-asia-pacific/downloads/fedex-lithium-battery-guide-ja-jp.pdf