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リチウムイオン電池製品の発火の原因と、安全に使うための対策




2021年11月7日の毎日新聞に、「リチウムイオン電池火災が急増 都内で90件、昨年上回るペース」という記事が掲載されました。

リチウムイオン電池火災が急増 都内で90件、昨年上回るペース | 毎日新聞
携帯電話などに使われるリチウムイオン電池から出火する火災が都内で相次いでいる。今年1~9月に90件発生し、昨年1年間(104件)を上回るペースとなっているため、東京消防庁が注意を呼びかけている。


2020年は過去5年間で最も事故件数が多い年でした。しかし、今年はそれを上回り、今後も増える可能性があります。
危険をできるだけ避けるために、発熱・発火の原因や、気をつけるべき点をご紹介します。


そもそも、リチウムイオン電池は、なぜ発火するのか?


リチウムイオン電池は危険、というイメージを持っている方は多いと思います。
しかし、なぜリチウムイオン電池は発火するのでしょうか。


リチウムイオン電池は、内部で化学反応を行っています。
充電と放電を繰り返すリチウムイオン二次電池は、化学反応を繰り返しています。
発煙・発火・膨れ等の不具合は、内部、外部、製造工程、使用法などさまざまな原因が複雑にからみあい、発火原因を必ず特定できるとは限りません。

発火の原因は特定しにくいが、やってはいけないことを避ければ事故を防げます!


その中で、大きな原因を簡単にあげてみます。

【非純正品バッテリーから出火した火災】東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-ooi/topix/denchi.pdf より


リチウムの析出

リチウムイオン電池は使用しているうちに、内部にリチウムが析出することがあります。
析出とは固体として出てくる事です。析出したリチウムが正極と負極の間にあるセパレーターをつきやぶり、ショート(内部短絡)すると、スパークが有機溶剤に引火し、燃焼を引き起こします。

リチウム析出の原因は、コンタミなど、製造工程までさかのぼると幾つも可能性がありますが、大きな要因の一つは使用による劣化です。

リチウムイオン電池も生きて働いているので、充放電を繰り返すうちに劣化して体力がなくなったり体調が悪くなります、寿命があるんです…


ユーザー側でできる事は、

劣化を促進する高温放置を避ける
低温環境での充電を避ける
メーカー推奨の使用法を守る(充電器の電流)、振動など大きな負担をかけない

などです。

ガス発生による膨張

長期間の使用や長期間の放置状態が続くと、電池内部で電解液が劣化し、ガスが発生することがあります。
通常のリチウムイオン電池は外気圧により内部構造がズレないよう抑え込まれています。
ところがガスが発生することにより内部構造がズレやすく、ここに衝撃が加わると正極と負極が触れて引火し、特に充電中には大きな火災の原因になります
また、ケースの中の電池に衝撃が加わり、内部損傷や熱発生で電解液が反応してガスが発生する場合もあります。
膨張しやすい電池としにくい電池の違いは、水分の含有量、電解液(種類・組成)の分解しやすさなどがあげられますが、どの電池が膨れやすいなどの判断は難しいでしょう。

劣化するとガスが発生することがある! 衝撃が加わると危険です

ユーザー側で対処できるのは、

製品に振動や落下、圧力など衝撃を加えない
外観に異常があり、電池が膨張している可能性のある時はすぐに使用を停止し、メーカーに連絡すること

保護回路の品質

リチウムイオン電池(セルおよび、組電池)は、電池だけでは充電電圧をきめたり、過放電をとめることができません。また、複数のセルバランスをとることができません。
その為、保護回路が必要になります。(電池に付属している回路のほか、機器による外部制御も必要です)
この保護機能が適切に行われていないと、温度管理や劣化防止ができず、非常に危険です。
安価なモバイルバッテリーや電子タバコなどのアプリケーションは保護回路の質が低い、もしくはまったくないこともあります。

リチウムイオン電池は自分で自分を守れない!だから保護回路が重要です

ユーザー側で対処できるのは、

安価で素性の不明な製品やPSEマークのついていない製品を買わない
充電器など付属品はメーカー指定品を使う

などです。


安全な使い方、選び方

リチウムイオン電池の選び方


安全なリチウムイオン電池製品を選ぶためには、品質が良いことが重要です。
どんなに気をつけて使っても、製造工程の管理が適切でない、粗悪な製品では危険な可能性があります。非純正品を避けるのはもちろんですが、まず
PSEマークがついている製品を選ぶことです。

また、目安として、リチウムイオン電池の経験があるメーカーの方がより安全です。
電気製品で有名なメーカーでも、モバイル用の二次電池の知見が不足している場合もあります。
安価な製品は、そのぶん品質対策が行きとどいていない可能性があり、危険なことも考慮に入れて検討してみてください。

安全に使う方法


分解、穴をあけるなどをしてはいけないのはもちろんですが、付属の充電器、メーカー指定の付属品を使いましょう。
温度が高い状態での放置、落下や振動や強い衝撃を与えることは絶対にやめてください。

電池は生き物だと、よくいわれます。
個体差もあります。
小さな衝撃でも、重なれば事故につながることがあります。丁寧に扱ってあげてください。
二次電池にはサイクル寿命があり、使い続ければ劣化していきます。
充電が遅くなったり、膨張や使用時に熱くなるなど、異常を感じたら使うのをやめて、適切な方法で廃棄しましょう。


PSE(電気用品安全法)