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ラミネート型リチウムイオン電池とは:構造、作製方法、メリット、デメリット…

用語・市場・評価

リチウムイオン電池には主に、ラミネート型(ラミネートセル)と円筒形などの缶型があります。ここでは、ラミネートセルの基本的な構造や作製方法、メリット、デメリットについて簡単に解説します。

ラミネートセル(Laminated cell)


ラミネート型リチウムイオン電池は、英語でLaminated cellといいます。

Laminate(ラミネート) とは、薄いシートで被う、主に金属を叩いたり圧縮したりしてシートにする、いくつかのレイヤーを組み合わせるなどの意味があります。

Cell(セル)は一般には”細胞”ですが、電池の場合は、負極と正極を一つずつ持ち、外部回路のない単一のユニットを指します。battery(バッテリー)はセルやモジュール、パックを含む総称としてよく用いられます。

一般には、ラミネート型やパウチ型と呼ぶ事もありますが、電池業界では主にラミネートセルと呼ばれています。


ラミネートセルは、電極などの電池材料が包材と呼ばれる外装に入っています。この外装がラミネートフィルムであることからラミネートセルと呼ばれます。

ラミネートフィルムは、レトルト食品のパッケージに似た銀色の柔らかいシートです。
異なる薄い素材を貼り合わせることで、新たな機能を持ったフィルムを指します。
フィルムのラミネート構成はメーカーにより異なります。

昭和電工株式会社が公開している、リチウムイオン電池用アルミラミネートフィルム SPALF®の構成をみてみましょう。

材質厚み役割
二軸延伸ナイロン25μm材料補強、耐衝撃
接着剤4μm接着
下地処理剤微量デラミ防止
アルミ箔40μmバリア、形状保持
下地処理剤微量密着補強、耐薬品
特殊接着剤2~4μm接着
シーラント(CPPまたはPE)30~50μmシートヒール材料
昭和電工株式会社ウェブサイトより
この製品へのお問合せは昭和電工(株)のウェブサイトから!
リチウムイオン電池用 アルミラミネートフィルム | レゾナック
リチウムイオン電池用 アルミラミネートフィルムについて紹介します。レゾナックの製品情報ページです。

アルミ箔を中心に、処理剤、接着剤があり、表のベース基材が食品ラミネート袋にもよく使われる二軸延伸ナイロンです。耐衝撃性・耐熱性・耐寒性・突き刺し強度に優れた素材で、電池を保護します。

最内層は、シーラントです。熱により溶解し、固まることで外装をシーリング(封止)します。

ラミネートセルの構造


ラミネートセルと、円筒形などの缶セルに入っている材料は同じで、基本構造も同様です。
電極とセパレーターが重ねられ、平たく畳まれているか、丸められているかの違いです。
ラミネートセル内部の電極積層は、旗のように長い電極・セパレータが一度に端から折りたたまれて平たくされている場合と、一枚一枚の電極が一枚のセパレータを挟みながらミルフィーユ状に重ねられている場合があります。後者はZフォールディングと呼ばれることもあります。

ラミネートセルの解体による具体的な内部の写真はこちらからご覧いただけます。


ラミネートセルの正極と負極には金属タブがあり、外部にそれぞれプラスとマイナスとして露出しています。
円筒缶タイプは缶内部で金属タブが缶の外部露出部分に溶接されており、乾電池と同じように、上下がプラスとマイナスになっています。

ラミネートセルの作製方法

包材の扱い以外の材料、流れは、円筒形セルとほぼ同じです。

スラリー作製~電極積層

電極に塗るスラリーを作成し、箔に塗工します。
スラリーとは、活物質を溶剤やバインダーで希釈したドロドロの粘液です。見た目は固まりかけのインクのようであり、負極はまさにカーボンが主です。電極塗工技術には印刷技術をベースとした磁気テープなどの塗工技術が応用されています。

塗工、プレス圧着後の電極は、カットされ、セパレーターを真ん中に挟んだ負極と正極の3セットで積層されます。
正極と負極が接触してショートしないよう、セパレーターは両極より大きくカットされます。
セパレーター>正極>負極の順に小さくサイズ設計されます。

封入

包材に電極+セパレーターを封入します。
包材は金型でカップ状に加工されます。二枚の包材で電極+セパレーターを挟み込み、三方を熱シールするのが一般的です。

注液

シールした包材の、残った一方の開いた部分から、電解液を注入します。
電解液が電極に染み入る(含浸)するよう時間を置きます。

SEI形成

電解液が十分含浸したのち、残った一方を封止し、化学反応を起こさせる初回サイクル充放電を行います。
金属リチウムは電解液中の水や溶媒と反応して、SEI被膜(Solid Electrolyte Interface 固体電解質界面)を形成します。SEIは、電極と電解液を隔て、リチウムイオンを透過させ、可逆的リチウムの挿入脱離を可能にします。
また溶媒分子をブロックし、保護膜となって金属リチウムを有機電解液の中で安定させる重要な役割を果たします。

SEIが、どのような化学反応で形成されるのかは解明されていません。
ただ、形成され、リチウムイオン電池にとって重要であることがわかっています。
リチウムイオン電池の化学反応にはまだ不明な点が数多くあります。


ガス抜き

SEI形成に伴い、電解液からガスが発生します。ガスによる電池の膨れを防ぐため、発生したガスをガスポケットという包材の余分なシール部分に溜め、切り離します。

エージング

完成したセルを選別します。打痕等外観や、サイズ、電圧など、検査表の数字と限度規定は各メーカーにより異なりますが、それらの前にまず、エージングによる選別を行います。
エージングは、自己放電による初期不良セルを判断するための放置期間です。
期間はメーカー規定により、概ね1~2週間です。充電されたセルは、時間経過とともに自己放電で徐々に電圧が降下します。この降下が他より早いセルは、例えば内部にマイクロショートなどの目に見えない不良があり、設計された容量を溜めておけず、市場において不具合を起こす可能性が高くなります。
単セルではなく、パックにアセンブリされていれば、セルバランスを崩すなど、組み込み機器の品質へ大きな影響が出ることもあります。
一致性を高めるため、自己放電量が近いセルのみ選ばれ、大きく外れたセルは弾かれます。

上記のグラフだと、セル4は電圧降下が大きい為、エージングで不良と判断されます。
自己放電は放置期間が長いほど顕著に現れるため、1~2週間のエージングにより疑わしいセルを判断できます。

一致性の低いセルがなぜ危険か、詳しくは、リチウムイオン電池のセル、モジュール、パックの違い、セルバランスとはで解説しています。


ラミネートセルの用途とメリット