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リチウムイオン電池のタブと溶接とは~EV用バッテリーパックの大容量化に対応するために

用語・市場・評価



リチウムイオン電池を使用する際の重要な部材に、タブ(tab)があります。
タブは、セル(単電池)から電流を流し、プラスとマイナスの新しい端子へ接続や再分配をおこなうための薄い金属板です。

ここでは、主に18650など円筒形電池パックの接続に用いられるタブ(バスバー)と、その溶接について簡単に説明します。

電池タブの種類

リチウムイオン電池のタブと呼ばれるものには、用途により数種類あります。

タブ(バスバー)

タブ(バスバーと呼ぶ場合もある)主に円筒形18650など、缶タイプセルの電気的接続に用いる金属板。溶接などによりセルに接合されます。
複数セルをアッセンブリ(組み立て)する場合、直列並列でつなぎ方が変わるため、サイズやデザインも多様。
材質は主にニッケルですが、EVなど高出力用に銅合金材等も用いられます。

円筒形セルの接続を上からみた図。グレーの部分が金属タブ。赤〇部分が円筒形セルのプラス極とマイナス極との溶接部
図 ご提供:日本アビオニクス株式会社


円筒形セルの内部で、集電箔から缶キャップと缶底に溶接される正極と負極の延伸部分もタブとよばれるものです。
しかし外部から観察できないので、組み立ての際に言及されることはほぼありません。


18650セルの正極・負極部分(タブ/バスバー溶着部)


18650などに代表される円筒形缶タイプのセルは、円筒の上側が缶のフタ部分でプラス(正極:トップキャップ)、下側が缶底でマイナス(負極)です。
シュリンクの下の缶側面はすべて負極であり、電圧を計測できます※危険ですので絶対にシュリンクは自己判断で剝がさないでください。トップキャップはガスケットで負極缶部と絶縁されワッシャーで保護されています。



缶の内部では、収納された集電箔から、電極タブが内側でトップキャップと缶底に溶接されています。
通常は、そこからさらに金属板タブ(バスバー)の溶接により導体を延伸し、外部ケーブルなどに接続します。


タブリード

タブリードラミネートセルの内部から外部へ電気を取り出す端子。正極用には主にアルミ(Al)、負極用には銅ニッケルめっき(Ni-Cu)が用いられる。
ラミネートセルのタブ(タブリード)は、セルの一部です。
電池内部で、正極の金属箔と負極の金属箔にそれぞれの端が溶接され、外装でシールされて外部に一方の端が露出します。シール部分はシーラントで接着されます。

ラミネートセルを複数接続する場合はタブリード同士で接続します。補強のため金属板(バスバー)を用いることもあります。


タブを英語でいう場合


英語表記はそれぞれ下記です。

Tab タブ
Bus bar バスバー
Tab Lead タブリード 


「tab」は英語で「引っ張ったりつるしたりするつまみ」や「端から突き出した部分」の意味で、缶のプルタブのタブと同じです。
「bus bar」は、分電盤や制御盤や電池で高圧大電流を流す導体です。busは英語で「母線」を意味します。乗り物を表すバスの別の意味です。

とはいえ、基本的にはすべて「タブ」と呼ぶことが多く、どういうタブかは文脈で判断されています。



タブの重要な役割

正極材、負極材、セパレータ、電解液、バインダー、外装材など、リチウムイオン電池の部材は多数あります。
しかし、優れた部材を用いてリチウムイオン電池が完成しても、電気をアプリケーションに伝えるには外部接続が必要です。
その外部接続を行うのがタブです。

円筒形セルの場合、溶接でタブ(バスバー)を電池に接合し、外部とコネクトします。
タブ溶接は、電池エネルギーを外部に出力し動作させる重要なプロセスです。


また、タブ(バスバー)は導体ですから、導電率が高いほど、ロスなく電池のエネルギーを利用することができます。
例えば、銅合金とニッケルでは、同じ厚みであれば銅合金は導電率がNiの2倍、同じ電力を取り出す場合は厚みを半分にできます。

複数セルの電池パック、特に大量のセルを使うEVや電力貯蔵システム(ESS)では、電池の発熱を吸収する役割も果たします。




リチウムイオン電池タブの溶接方法

電池タブの溶接には、大きく分けて抵抗溶接と超音波溶接があります。

抵抗溶接(Resistance Welding):電流を流して母材を溶かし接合。18650など缶タイプセルのタブ(バスバー)に用いられる。スポット溶接とも呼ばれる。


抵抗溶接図 元画像ご提供 日本アビオニクス株式会社



超音波接合(Ultrasonic Bonding):振動による摩擦で金属を接合。ラミネートセルのタブリードに用いられる。


バッテリーパックでは、場合によって数百、数千の溶接が行われます(テスラ modelS 2014では18650が7104セル接続されています)。この溶接精度は、バッテリーパック全体の品質にとって非常に重要で、1%の不良でも、それを含む部分が機能しなくなり、重大な不具合を引き起こします。


また、レーザー溶接、ワイヤーボンディングといった手法もあります。



18650セルのタブ(バスバー)抵抗溶接

抵抗溶接機を使用して、タブ(バスバー)を18650セルに接続した場合です。
タブに押しあてた二つの溶接電極の間に電流を流し、発生する抵抗発熱により、接合界面をつくり溶着します。

【インバータ式電源による電池タブ溶接】

画像ご提供:日本アビオニクス株式会社




大容量・急速充電用タブの今後の市場

2000年初頭に18650など円筒形リチウムイオン電池のモジュール化がはじまり、コンデンサで接合可能なニッケルタブ(Ni)が主流となり、現在でも多く使われています。

しかし、大容量と急速充電が求められる近年のEVや大型蓄電池では、導電率が低くコスト高のニッケルタブに代わり、銅合金タブ(すずメッキ銅合金)が注目されています。

銅合金タブはニッケルタブと比較して導電率が2~4倍で、コストも約3分の1と抑えられています。また、ナゲット形成による電解液漏れリスクの回避、セル放熱効果もあり、大容量モジュールの安全性にも貢献します。

   ニッケル(Pure Ni)銅合金
(NB 109/Sn メッキ)
コスト\6000/kg\2000/kg
導電率(IACIS)22%40%
資料ご提供:日本アビオニクス株式会社




日本ではまだニッケルタブが主流ですが、中国やアメリカではEVや大型蓄電池向けのアッセンブリ(組電池製造)に銅合金タブが用いられるようになっており、今後、小容量向けのニッケルタブと大容量向けの銅合金タブの差別化が進むと考えられます。
現状のNiタブ中心の溶接に加え、大容量・高速充電に対応した設備と製造技術の拡大が望まれるところです。





ご協力御礼~日本アビオニクス様

今回の記事には、日本アビオニクス株式会社 接合機器事業部様に、資料ご提供など多大なご協力をいただきました。誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
電池外部の素材につき、うっかりがあってはと懸念していましたが、ご厚意により、勉強させていただきました。※文責は当サイトです。投稿内容に不備がありましたら、お問合せよりお寄せください。


日本アビオニクス株式会社様は、リチウムイオン電池用抵抗溶接機をはじめ、様々な接合機を取り扱っておられます。
(製品・工法から探せるアプリケーションご紹介ページ わかりやすいです!)
https://www.avio.co.jp/products/assem/application/#tabsPanel1

また、サンプル実験のラボルームがあり、性能評価や導入時の機種選定のため、実際に機器を使用したサンプルテストが行えます。
銅合金タブなど、タブのご準備もしていただき、試せるそうです。
デモ機貸し出しや、WEBカメラによる遠隔でのサンプルテスト依頼もOKとのことです。
ご興味がおありでしたら、ぜひご連絡・お問合せをしてみてください。

接合装置・赤外線カメラ・サーモグラフィ・マイクロエレクトロニクスの日本アビオニクス
日本アビオニクス株式会社は接合装置・赤外線カメラ・サーモグラフィ・マイクロエレクトロニクスに関する商品・サービスをご提供する企業です。









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