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リチウムイオン電池のCレート、CCCV充電とは?

用語・市場・評価

バッテリーの充放電レートは充放電速度とエネルギーの相関を示します。その速度を示すCレートと、容量測定のCCCV充電について簡単に解説します。

Cレートとは?

電池の充放電において、Cレート(Capacity Rate)は、電池容量に対する充電や放電の速度を示します。Cレートを高くすると充放電時間が短くなり、その分、電池に与える負荷も増大します。
電池の定格容量は、一般的に1Cレートで評価されます。例えば、10Ahのバッテリーを1C放電すると放電電流は10Aとなり、1時間で10アンペアを供給できることになります。同じ10Ahのバッテリーを2C放電すると放電電流は20Aとなり30分で20アンペアを供給します。0.5Cでは2時間で5アンペアを供給します。

  • 1C:電池の定格容量を1時間で充放電する速度。
  • 2C:電池の容量を0.5時間(30分)で充放電する速度。
  • 0.5C:電池の容量を2時間で充放電する速度。


Cレートが高くなるほど充放電時間が短くなり、Cレートが低いほど充放電時間が長くなります。


ただし、実際にはCレートが高くなると、熱に変換されるエネルギーが発生し、容量が低下する可能性があります。そのため、電池の適切なエネルギー値を得るためには低いCレートが適しており、0.2C=5時間などで評価されます。
急速充電をする場合は、バッテリー温度が上がりすぎないよう一定温度を超えると充電速度を下げる設計が採用されます。

Cレートの違いによるWh容量差。同じ電池もレートが低いほど放電容量が大きく、高レートになると小さくなる。


放電時間=1/Cレート(h単位)
放電時間=60/Cレート(min単位)
例)放電時間が2時間=1/0.5(C)、放電時間が120分=60/0.5(C)

リチウムイオン電池は高いCレートに耐える組成をもち、短時間で高出力なエネルギーを放出できます。高いCレートでも充放電できる電池は急速充電が可能ですが、サイクル寿命は一般に短くなります。

高レート充電と低レート放電の関係

  1. 高レート充電:
    • 充電時間を短縮するために高い電流で充電する。
    • 電池の温度上昇や劣化リスクが増加するため、設計に工夫が必要。
  2. 低レート放電:
    • ゆっくりと電流を取り出すことで電池の持ち時間を長くし、温度の上昇や内部抵抗の影響を軽減する。

ゆっくり充電を行うほうが電池寿命にプラスですが、多くの運用時では充電時間の短縮が好まれます。このバランスをとることで、電池の寿命や効率を維持しながらデバイスの使用時間を最適化できます。


デバイスの充電・放電レートの設定

デバイスごとに設計目的や用途が異なるため、以下のような要素を考慮して充電・放電レートが設定されます。

  1. 電池の種類と特性
    • リチウムイオン電池(Li-ion)はエネルギー密度が高く、充放電効率が良いが、高Cレートでの運用は劣化を早めます。
  2. 使用パターン
    • 例えばBluetoothイヤホンは小容量バッテリーを使用し、低電力消費が前提なので、低レート放電が標準です。
    • 高速充電が求められる場合でも、安全性を保つため0.5C〜1C程度の充電速度が一般的です。
  3. 安全性と寿命のトレードオフ
    • 高Cレートでの充電・放電は温度管理が必須で、内部回路が制御する設計が施されています。
    • 放電時にはイヤホンの再生時間を最大化するため、設計上、低レート(0.2C〜0.5C程度)の放電が主流です。

ユーザーがスマートフォンのバッテリーを長持ちさせるためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  1. 高速充電を頻繁に使わない:電池残量が適度に残った状態で充電する
  2. 電池残量を20〜80%の間で維持する:高電圧・高温化を抑える
  3. 過度な高温・低温を避ける
  4. 夜間充電の回避:100%まで充電したまま長時間放置しないように注意する。

CCCV充電とは?

CCCV充電とは、CC充電とCV充電を組み合わせた定電流定電圧充電です。
定電流・定電圧充電は、リチウムイオン電池など二次電池で広く使用される充電方法です。二次電池の電圧に応じて、最初に定電流で充電するCC充電を行い、バッテリーが設定された電圧に達すると、定電圧で充電するCV充電に切り替えます。
CV充電に切り替えて電流値が下がっていく状態を電流を絞るともいい、目的は安全に満充電に近い容量を得ることです。

  • CC充電:Constant Current 定電流充電。最初に一定の電流で充電します。この段階では、バッテリーの電圧が徐々に上昇します。
  • CV充電:Constant Voltage 定電圧充電。バッテリーの電圧が設定値に達すると、電流が徐々に減少していき、バッテリーが安全に満充電に近い容量に達するまで充電が続きます。
  • CCCV充電:Constant Current, Constant Voltage 定電流定電圧充電
cccv充電

なぜCC充電, CV充電だけでは安全に満充電に近い容量を得ることができないのか

リチウムイオン電池は、充電中に電圧が上昇し、ある電圧(一般的には4.2V程度)を超えると、内部で化学反応が不安定になる可能性があります。CC充電では一定の電流で充電し続けるため、電圧が上がりすぎてしまう過充電が発生し、バッテリーの劣化や発火のリスクが高まります。
CV充電段階では、電圧が設定値に達すると、電流を減少して電圧を設定値で一定にしながら充電します。完全に過充電を避けるためには、電圧が設定された安全範囲内に収まるように注意が必要です。CV充電だけでは、最後の段階で過充電が生じやすいため、正確な制御が必要です。
なぜ最後の段階で過充電が生じやすいのかというと、電流がゼロに近づくタイミングが不正確なためです。また、CV段階でバッテリー内部抵抗や温度により電圧が完全には制御できずに変化し、結果として過充電のリスクが高まります。

充電の終息タイミング: CC充電段階では電流が一定で、バッテリーの電圧は上昇しますが、CV充電に切り替わった後でも、電流が完全にゼロになるわけではありません。電流が非常に少なくなると、充電が完全に終了したことを確認するのが難しく、これが過充電やバッテリーへのダメージを引き起こす可能性があります。

サイクル寿命にはCV充電がマイナスに働く

CC充電でCVを入れる(CCCV充電をする)と前述のように満充電に近い電池容量を得ることができます。
半面、CV充電を入れると実用時の充電設定では「電池の能力をフルに用いる」ことになり、電池劣化が早まり寿命が短くなります。
「電池の能力をフルに用いる」は、よいことのようですが、SoC、SoH、DoDとサイクル寿命の関係で触れたように、電池の長寿命化のためには80~30%で充放電する必要があります。
CV充電を入れるとSoC容量は多くなり、より広いレンジで電池を用いることになり、その結果電池劣化が早まります。
リチウムイオン電池長寿命化において、CCCVとCC,CV充電の使いわけは開発設定のノウハウといえます。

・性能を測る CCCV充電
・長寿命化  CC充電 ※CCCVでは劣化する