リチウムイオン電池材料の値上げにより、車載用リチウムイオン電池・民生用リチウムイオン電池が軒並み値上げとなる見通し。
これは、コバルト・ニッケル・銅・アルミ・炭酸リチウム・水酸化リチウムの価格が2021年水準から20~50%程度の価格上昇により、材料メーカーの値上げに伴い、電池メーカーでも吸収できずに価格改定を行う模様である。
実際、韓国LGは昨年末に韓国の国内代理店や車載メーカーに対して、22年の上半期の受注分から値上げとなる正式レターを発行している。また中国国内の小型LIBメーカーも値上げ分を販売価格で吸収できずに各社が5~10%の値上げを行った。
さらには、原油価格の上昇や輸送コンテナの確保、輸送費用も昨年対比で10%~20%程度の値上げとなり、海外から日本に輸入し製造・加工を行う企業には痛手となる。
地金相場の上昇
2021年2月 | 2022年2月 | 比較(2021年→2022年) | |
ニッケル | 18,584 (USD/トン) | 24,015 (USD/トン) | 30%増 |
コバルト | 24,081 (USD/トン) | 34,391 (USD/トン) | 43%増 |
銅 | 8,470 (USD/トン) | 9,943 (USD/トン) | 17%増 |
アルミ | 2,078 (USD/トン) | 3,245 (USD/トン) | 56%増 |
リチウム(先物価格) | 73,031 (CNY/トン) | 493,500 (CNY/トン) | 575%増 |
炭酸リチウム | 約120%増 | ||
炭酸リチウム | 約120%増 |
車載電池メーカー、大手電池メーカーの材料確保の動きが加速するなか、ウクライナ‐ロシアの地政学的リスクや為替の影響により更なる値上げとなる見込みが高いと考えられる。
2022年のリチウムイオン電池価格は当面高止まりの状況が続くものと思われ、電池メーカーの景況感や電池購入価格には注意が必要だろう。
また、これとは別に民生用18650電池の需給逼迫の状況が2020年3月頃から続いている。特に影響が大きいのが高容量タイプ(3.0Ah以上)となっている。18650タイプの量産を行ってきた電池メーカーがEV向け21700へ方針転換したことにより、そもそもの物流量が減り、18650で製品搭載していた産業用途の製品側の対応(18650⇒21700への変更)が進まないためである。
2019年当時の18650電池メーカー各社は、低容量タイプ、高容量タイプ、ハイレートタイプと10~20程度のラインナップを抱えていたが、2021年末では21700のラインナップで5~10程度になり、18650のラインナップは10前後まで減っているのが確認できる。
2022年以降、18650のラインナップはさらに収束することが予想され、18650タイプでなければならない製品/市場にシュリンクすると考えられる。
実際に2021年時点においては高容量タイプ、ミドルレンジ(容量/レートの両立)、ハイレートタイプ(1.5~2.0Ah/30A)で各2~4種類程度となっている。
今後の製品設計においては、使用する電池タイプを18650あるいは21700タイプとするか、選択を迫られる状況になるだろう。安定調達に重点を置く場合は中国ローカルメーカーのパウチタイプの選択を迫られるかもしれない。
ここで気を付けないとならないのは、中国ローカルメーカーの18650セルの採用であり、個人的には一番やってはいけない選択と考える。筆者(うっかり八兵衛)は中国ローカルメーカーの工場監査を数多く経験しており、円筒形電池の工場監査も多く行ってきた。小型リチウムイオン電池工場、特に円筒形電池に参入してきた企業の多くはニッケル水素電池工場からの切り替えであり、そもそもの工場内環境/特定の工程環境がリチウムイオン電池製造に適していないことが多く散見されている。
今後のリチウムイオン電池の調達方針は、多岐にわたって検討をせざるを得ない状況が続くと考えられ、採用するモデルの市場流動性・将来的なEOL可能性・購入価格・品質基準などをじっくり考慮しなければならない。少なくとも2022年~23年は逼迫した状況が続く可能性が高く、注視が必要である。