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電池漫談(1)~全固体電池~

コラム

コロナ禍もひとまずは一段落ついたかなぁということで、電池仲間と少しずつ会う機会が増えてきている。
そんななか、9月29日~10月1日に第一回二次電池展秋が開催され、訪問した友人から感想を聞いた。
新しい情報を何かキャッチできるのではないかワクワクして訪問したようだが、蓋を開けてみれば皆口を揃えてがっかりだったと落胆していたようだ。
出展されていたのは製造設備企業、部材メーカー、電池を使った製品などであり、過去のバッテリージャパンと比べ物にならないとのこと。
(そもそも秋に東京で開催されるのは初めてであり、今回が第一回目なのだから比較することがお門違いではあるのだが。。。)

久しぶりにお互いに自由気ままに話を進めていくと、必ず日本の電池開発戦略やら海外勢(中国、韓国、欧州)の躍進の話題が自然に上がってくる。

現在所属している企業、過去に所属していた企業の文化により意見は様々であり、それぞれ自由にリチウムイオン電池の未来像を勝手に想像して話が膨らんでいく。
この議論はそれぞれの開発者の背景(所属企業、抱えている開発テーマ)の視点で物事を捉えており実に面白い。

そんな中でそれぞれ共通の認識も持ち合わせていることも面白い。



1)世界各国のリチウムイオン電池開発は、現在の系(NCM/Gr+SiOx)をカスタマイズして進めていくのに対し、日本企業の開発方向性はよりドラスティックな目標設定をしている。

近い将来にEVに搭載されるであろう電池製造(より実用的な設計/目標)を掲げる欧州・中国・韓国に対し、いつ実現できるか分からない全固体電池開発に没頭し、出口が見えずらい日々にフラストレーションを抱えているのではないかと思ってしまう。
確かに、全固体電池は村田製作所やトヨタで開発を終え量産されてきているが、焼結タイプのため大型化ができない、高圧力下でなければ運用ができないなどの課題を抱えており、何らかの技術的なブレークスルーが鍵となる。

2)トヨタをリーディングカンパニーとした全固体電池開発から、国内各企業が脱却できずにいる。

2020年東京オリンピックでトヨタの全固体電池を搭載したEVが会場での送迎に使用され、一躍世界から注目を浴びると期待されていたが、欧州や中国・韓国は既定路線の開発を着々と進めており、実用的なEV用電池開発(ここでいう実用的なの意味は、NCM811/Gr+SiOxを指す)を加速している。
電池開発・設計者の本音としては、自分が開発した電池設計が世に出て多くの人に良い評価を頂けることを目標としており、世に出るかどうか分からない開発方針(会社方針)に対して、本当にこの道で良いのか自問自答しているように思えて仕方ない。

3)そもそも全固体電池なのか

リチウムイオン電池開発のゴール=全固体電池というのは、使われる業界・用途によっては最適解と考えるが、重量エネルギー密度/堆積エネルギー密度を要求される移動体において、全固体電池は不適解ではなかろうか。
確かに安全性の議論になると現在の系では、口を揃えて技術的な克服は難しいと考えている。
2000年代に日本主導で進めてきたリチウムイオン電池開発は、日本人特有の擦り合わせ技術により、飛躍的な性能向上を果たし、安全性についても飛躍的に進歩したと思っている。
全固体電池の開発は、各部材(負極、正極、電解質、合成法)の新規開発を伴い、それぞれ独立した開発結果の歩み寄りにより、着地点の妥当性を検証しなければならない。
従来の系の延長線の開発を行ってきた開発者から見てみれば、たまったもんじゃなく、得意分野を生かした転職活動に精を出すのも十分うなずける。
全固体電池を目標とせず、半固体電池(ゲル電解液、硫化物系正極、酸化物系)などを中間ゴールとして設定するのが妥当であろうというのが、現職開発者の本音のようだった。

2035年に欧州のガソリン車完全撤廃が決まり、ようやく国内自動車も本腰をあげてエンジン部品の開発を一切行わずに電池・モーター関連の開発へ大きく舵を切った。

大型の全固体電池の実用化(本当の量産化)に向け、カギとなる材料(正極活物質、負極活物質、電解質)が日本から世界に売り出せるよう、国内材料メーカーに心から期待したいと思う。

もう10月というのに夏の日差しが強く、温暖化も待った無しの状況に是非とも日本の技術力でブレーキとなって欲しい。


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