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リチウムイオン電池の構造と仕組み~リチウムポリマー、リチウム金属、全固体電池の違い




リチウムイオン電池とは、どのような仕組みの電池なのでしょうか。

リチウムポリマー、リチウム金属(リチウムメタル)、全固体電池など、いくつかの種類があります。
名前は知っていても、違いについては分かりにくいかもしれません。

ここでは、それぞれの電池の違いと特性を、リチウムイオン電池の基本的な構造と、それに伴う安全性を中心に解説します。

リチウムイオン電池(Lithium-ion battery)とは


リチウムイオン電池の構造は、シンプルです。
主に正極・負極・セパレーター・電解液という材料で構成されています。

Lib電池の基本的な用語は、リチウムイオン電池用語集でご紹介しています。

正極(カソード)
負極(アノード)
セパレーター
電解液
集電体

リチウムイオン電池の基本構造

正極は、集電体(金属箔)に正極活物質を主とした正極材が塗布されています。
負極は、集電体(金属箔)に負極活物質を主とした負極剤が塗布されています。
正極活物質には、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが主にあります。
負極活物質は、主にカーボンが用いられています。
正極と負極が接して短絡しないように、間を隔てているのがセパレーターです。
正極、セパレーター、負極は、ラミネートや缶の外装に入れられ、リチウムイオンが遊動するための電解液で満たされます。

この正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで、エネルギーが発生します。

正極と負極の間にセパレータがあり、セパレータの穴をリチウムが通り抜けて移動します。イオンが移動できるように全体が電解液で満たされています。


パウチセル(ラミネートセル)と缶タイプ ~メリットとデメリット

正極・負極・セパレーター・電解液がアルミラミネートフィルムに入っている電池が、パウチセル、または、ラミネートセルです。

缶に入っているものが、18650などの円筒形セル(Cylindrical)、または角型セル(Prismatic)と呼ばれます。

セルは負極と正極を一つずつ持つ単一のユニットです。
保護回路や外部制御装置が付属する一つまたは複数のグループになるとバッテリー(モジュール、パック)と呼ばれます。ただ、セルとバッテリーの区別があいまいのまま、セルがバッテリーと呼ばれることも多々あります。

ラミネートセルと缶タイプセルには、おのおのメリット、デメリットがあります。

ラミネートセル(Pouch cell)
缶タイプの円筒形セル(Cylindrical)


ラミネートセルのメリットは、形が自在なことです。

製品設計に合わせて、縦○㎜、幅○㎜、厚さ○㎜、というように細かく設定できます。
イヤホンなどの小さい電池、スマホなどの薄い電池から、EVなどの大容量電池まで
様々な機器に用いられています。

デメリットは、外装がラミネートのため、 外からの衝撃に弱いことが挙げられます。
また、膨らんだときにハードケースや筐体を壊す可能性があります。


缶タイプのセルのメリットは、大量生産に向いていることです。

また、ほとんどのセルには内部に保護回路が入っているため、安全性が高く、缶で強く圧迫しているため、膨張の影響がほとんどありません。

デメリットは、形の自由度が低いことです。
18650など、小型セルがほとんどで、大容量にするにはいくつもの電池を用いて、組電池にする必要があります。
また、外装が缶のため、重量が重くなり、EVには向いていないとされています。
ただし、テスラは缶タイプの電池を採用しています。

BlomstによるPixabayからの画像
TESLAはパナソニックの18650セルをはじめ、缶タイプのリチウムイオン電池を使っています



一般的に、リチウムイオン電池と呼ばれているものは


一般にリチウムイオン電池と呼ばれているのは
正極・負極・セパレーター、液体の電解液で構成された電池です。

一回の放電で終了する電池を一次電池、繰り返し充放電が行える電池を二次電池と呼びます。

リチウムイオンが遊動(泳ぐように移動)するために、電池の中は電解液で満たされています。

正負極が触れないよう、正極と負極の間にセパレーターが挟まれています。
正極と負極が触れると短絡が起き、揮発した電解質に発火する危険があるためです。

電極同士を分離して、リチウムイオンだけが行き来できるようにするのが、電池の安全性において最も重要な点です。




リチウムポリマー電池とは (Lithium-polymer battery)

電解液がポリマー(ゲル状)の電池です。
ゲル状であるため電解液の漏液リスクが少ないとされ、液体の電解液を用いたリチウムイオン電池と比べて一般に安全性が高いと言われています。

ただし、構造は基本的に液体の電解液を用いたリチウムイオン電池と同じであり、内部短絡や、過充電、発熱が起こらないわけではありません。

また、市場に出回っている小型ラミネート電池でリチウムポリマー電池と称されているものは、ほとんどが液体の電解液を用いた、通常のリチウムイオン電池です。

もともと、ソニーが開発したラミネート電池の電解液がゲル状だったことから、同じような小型ラミネート形状の電池に「リチウムポリマー」が通称として広まりました。

小型で容量の少ないリチウムイオン電池は、万一の発煙発火が大事故につながる可能性が少なく、ある程度の安全性が担保されています。ゲル状電解液は製造工程が難しく、コストがかかるため、本来的な意味でのリチウムポリマー電池が製造されることはほとんどないといっていいでしょう。


Kyle BowersによるPixabayからの画像
市販されている小型の1S1Pリチウムポリマー電池(=リチウムイオン電池)の外観。
黄色い部分はカプトンテープ。230mAhなので30mm×20mm×T4mm程度かと思われます。


リチウム金属電池とは (Lithium-metal battery)

負極に金属リチウムを用いた電池です。

リチウムメタル電池とも呼ばれています。

負極に主に炭素を用いた従来のリチウムイオン電池よりも、エネルギー密度を高める事が可能ですが、安全性が問題とされています。
電圧不安定と発熱の問題をクリアすれば次世代電池の可能性もあり、現在多くの研究がなされています。


全固体電池とは (solid-state battery)

正極・負極、固体電解質で構成された電池です。

固体電解質がセパレータの代わりに正極と負極を分離しています。
不燃性の固体電解質が正負極をへだてるため、短絡と発火の危険が低減されます。
ただし、実用化については、大型化、生産性、コストなどの点で課題があり、安定した量産供給にはまだ時間がかかると見られています。



まとめ

リチウムイオン電池の基本構造は<正極、負極、セパレーター、電解液>です。

電池性能に影響を与える構成、特質が大きく異なる場合、それに応じて

<ポリマー><リチウムメタル><全固体電池>と呼ばれます。

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