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リチウムイオン電池の劣化要因と診断方法

安全対策・市販品

リチウムイオン電池の劣化の主な原因と、劣化を判断する評価基準、について、簡単に解説します。

リチウムイオン電池の劣化とは

リチウムイオン電池の劣化とは、大きくわけて次の3つの現象としてあらわれます。

リチウムイオン電池の劣化と症状

症状原因結果の不具合
①容量劣化さまざまな内部化学反応充電してもすぐ使えなくなる
②ガス発生電解液の劣化、酸化還元分解筐体破壊、電池破裂、発煙発火の危険
③リチウム析出  低温、ハイレート、繰り返し充電などによりLi金属が固まりとして出てくるショート(短絡)発煙発火の危険

容量劣化は、すぐ危険に結びつく可能性は低いものの、電池内部が劣化しているため、使い続けるのはおすすめしません。
長期間放置した電池も同様です。過放電になり、保護回路の設計によっては、再充電時に発火の恐れがあります。

電池作成時・初期使用時

Денис МарчукによるPixabayからの画像

リチウムイオン電池自体の性能(特性)が劣化する原因には、さまざまな化学反応があります。
電池を作製する際と初期の使用状態で、すでに劣化は始まっています。
電池が電池として作用するには、電解質が活物質と安定して反応しなければなりません。その際に副反応として電極表面の層が生成されたり、ガスが発生します。
電池の製造工程で、エージングやガス抜きが行われるのはそのためです。

電池作製時・初期使用時の劣化→
不可避だが、製造工程の品質管理により、その後の劣化を判断し、選別することができる。


製造時に劣化要因を含まず、一致性が高い電池は、すぐ容量が落ちたり事故につながる恐れが少なくなります。
逆にいうと、この時点の管理ができていないメーカーの製品は、品質が低いものが混ざり、危険な市場不具合を出す可能性があります。
※一致性とは、ロット・品番において電圧・内部抵抗などの電池特性が一定に揃っていること

セルの一致性がなぜ重要かについては、こちらで解説しています



製品使用時の劣化

製品となった電池を使用している(充放電している)と、下記の症状が起こってきます。

・電極面のひび、割れ、しわ、ゆがみなどによる構造の変化
・正極活物質(金属)が溶け出し、負極で析出する
・負極箔(銅)が溶け出し、析出する
・負極でのリチウム金属析出・針状のデンドライト形成
・過放電、過充電による活物質反応の低下
・電解液の酸化・還元反応

これらが、上の表の3つの劣化症状、①容量劣化 ②ガス発生 ③Li金属析出につながります。

使用にともなう経年劣化→
不可避だが、使用方法やアプリケーション設計により程度を抑えることができる。また、大きな事故につながる要因は、電池設計、製造工程、筐体設計やBMS、保護回路、など総合的な対策により抑えることができる。




リチウム金属析出

リチウム金属析出は、負極表面にリチウム(Li)があらわれることです。解体すると、負極上に白い粉として目視できます。
リチウムが一部に重なって表出することで、デンドライト・針状になった場合、セパレーターを貫通して正負極の接触から短絡(ショート)を起こし、発煙発火の原因にもなります。



Li金属析出はカーボン負極を用いた一般的な組成のリチウムイオン電池で、仕様内の条件でも発生する劣化です。
特に、低温や大電流での作動、高速充電により促進されます。
それらの性能が求められるEV用の電池では、大きな問題となります。

大容量電池、とくにEV用では高速充電と安全性はトレードオフで、いまだ両立できない関係です。電解液が液状ではなく安全といわれる全固体電池でも、リチウム析出は回避できません。


リチウムイオン電池の劣化診断方法

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