UN3480・UN3481、UN3090・UN3091の違い
リチウム電池(バッテリー)の航空輸送と海上輸送に関わる、国連番号UN3480とUN3481、 およびUN3090,UN3091 の違いについてまとめました。
リチウム電池の輸送と梱包
リチウム電池は、身の回りから専門分野まで様々な製品の電源として使われています。
今後、リチウム電池を用いる製品はさらに増え、リチウム電池の国内外での輸送はますます重要になると予測されます。多くの法律や規制が安全のために整備されており、輸送や輸送に関する梱包の規定は複雑で、適宜変更され、簡単には判断できません。
ここでは、リチウム電池の容器や梱包の区別に用いられる国連番号=UN(United Nation’s number)のポイントについて解説します。
リチウム電池(リチウムイオン電池とリチウム金属電池)
リチウム電池(Lithium Batteries)とは何を指すのでしょうか。
リチウム電池と総称されていますが、輸送においては、リチウム電池には、リチウムイオン電池、リチウム金属電池という二種類の電池があります。
リチウム金属電池はリチウムメタル電池とも表記されることがあります。
UNやIATA規定で、リチウムイオン電池とリチウム金属電池はハッキリと区別されます。
なぜ区別されるのでしょうか。
理由は、リチウムイオン電池よりリチウム金属電池の方がエネルギー密度が高いためです。
リチウム金属電池は、負極にリチウム金属を用いた電池です。
→「リチウムイオン電池、リチウムポリマー、リチウム金属、全固体電池の違いと安全性」
リチウム金属電池は、リチウムイオン電池よりエネルギー密度が高く、リチウムイオン電池と同じ制限では安全が担保できない可能性があります。そのためUNやIATAの梱包規定では別扱いとなっています。
国際輸送に必要なリチウムイオン電池の国連勧告輸送試験 UN38.3についてはこちらをご覧ください。
リチウム電池の危険性
リチウム電池は私たちの身近で数多く使われています。しかし化学技術的には、輸送時にほとんどがクラス9の危険品に分類されるものです。
リチウム電池は内部に金属を用いており、その金属に付着した材料とガス発生の元になる電解液が化学反応を繰り返しています。常に動いている、生きている状態といってもいいでしょう。不適切な使用法、高温や振動といった衝撃が加われば、ショート(短絡)する可能性があり、温度上昇で発生したガスに引火して発火に至る場合があります。
リチウムイオン電池がなぜ危険かについて、詳しくはこちらをご覧ください。
航空輸送、海上輸送、陸上輸送、いずれにしてもリチウム電池を輸送するのには危険がともないます。
飛行中にリチウム電池が発火したために重大な飛行機事故が起きることもあります。そのため、輸送に関わる人々の安全を確保する目的で、多くの法律が世界の国々で制定されています。
UN(国際連合)やIATA(国際航空運送協会)危険物規則は、そのなかでも特に重要なレギュレーションです。
リチウム電池輸送時においては、まずリチウムイオン電池とリチウム金属電池で区別され、単電池か組電池か、単体か機器同梱・機器組込か、 さらに消費電力量Wh(リチウム金属はリチウム含有量)と重量により、レギュレーションが区別されています。
リチウム電池のUN番号による輸送規定の区別
リチウム電池の輸送規定は、まず「単電池」「組電池」で区別されます。
単電池は電池そのもののセルの状態、組電池は保護回路など外部装置をつけたバッテリーです。
1S1Pのバッテリーはセルではないので、組電池の扱いになります。
「単電池」は「電池単体」か「機器同梱・機器組込」か
「組電池」は「組電池単体」か「機器同梱・機器組込」か
さらに消費電力量Wh、重量でパッケージの規定(PI)が分かれていきます。
これらの輸送梱包の規定の差が、UN番号の違いです。
UN3480、UN3481、 UN3090,UN3091
UN(国連番号)の違いは次のようになります。
UN3480は、リチウムイオン電池(電池単体・組電池単体)
UN3481は、リチウムイオン電池(電池単体と組電池の機器同梱、機器組込)
リチウム金属電池はUN3090(単体)、UN3091(機器同梱、機器組込)に割り当てられます。
※2025年よりナトリウムイオン電池にもUN番号が付与されます。UN3551(単体)、UN3552(機器同梱、機器組込)
UN(国連番号)の3480,3481,3090,3091,また、3171,3166の内容をまとめました。
単電池=セル、組電池=バッテリーとしています。1S1Pは組電池=バッテリーです。
UN(国連番号) | 対象 | 内容 |
3480 | リチウムイオン電池 (リチウムポリマー電池を含む) | セル、バッテリーを単体で出荷 |
3481 | リチウムイオン電池 (リチウムポリマー電池を含む) | セル、バッテリーを機器同梱、機器組込で出荷 |
3090 | リチウム金属電池 (リチウム合金電池を含む) | セル、バッテリーを単体で出荷 |
3091 | リチウム金属電池 (リチウム合金電池を含む) | セル、バッテリーを機器同梱、機器組込で出荷 |
3171 | 電動車両 | |
3166 | ハイブリッド車両 | |
3551 | ナトリウムイオン電池 | セル、バッテリーを単体で出荷 |
3552 | ナトリウムイオン電池 | セル、バッテリーを機器同梱、機器組込で出荷 |
セルとバッテリーの違い
セルとバッテリーは、厳密にはどう違うのでしょうか。
リチウム電池・リチウムイオン電池・リチウム金属電池という言葉だけでは、セルとバッテリーの判別がつきにくく、用い方は複雑です。
バッテリーという名称がセルを含んでいる場合も多くあります。
通常の運用上はさほど支障がありませんが、 輸送規定上は異なるものですのでこのように区別しています。
セル(単電池) | 正極ひとつと負極ひとつと電解質で構成された単一の封入された電気化学的ユニット |
バッテリー(組電池) | 電気的に接続され、使用に必要な装置(例えばケース、端子、表示装置、保護装置)を備えた一つまたは複数のセルで構成されるグループ。 |
ボタン電池 | 高さが直径よりも小さい円形のセル |
ラミネートセル、円形や角型缶タイプのセル(いわゆる乾電池形)など電池の素の状態が「セル」
外部に保護回路や端子など装置が付いた状態が「バッテリー」です。
リチウム電池の航空輸送、海上輸送規定
リチウム電池の国際航空輸送、海上輸送、国内輸送出荷と梱包条件についてはリチウムイオン電池輸送についておよび、リチウム金属電池輸送について、をご覧ください。
国際輸送において、UN番号は大まかな区別で、その区別から更にIATA規定が細かく異なってくると考えていただければよいかと思います。
リチウム電池の航空輸送と海上輸送は、原則として同じ要件が適用されます。
ただし海上輸送の場合には、SP188の要件を満たせばリチウム電池は危険物から除外されます。
SP188は、リチウム電池を一般貨物扱いで輸送するための特別要件です。
→日本海事検定協会のサイトより SP188の条件(PDF)
https://www.nkkk.or.jp/transportation/qa/pdf/201901/qa02_4.pdf
おすすめの輸送梱包判別サイト
リチウムイオン電池・リチウムメタル電池の航空輸送の出荷規定判別に関して、今の処一番わかりやすく簡便なのがFedExのサイトかと思います。
『出荷したいリチウム製品を選択し、関連する貨物情報をご覧ください。』
からプルダウンで選択していくと、包装基準のPI・セクション・UN番号が提示されます。
必要となる容器とラベルも表示されます。
ただ、あくまでFedExの出荷判断ですので、他のクーリエ、フォワーダー、輸送会社などに適用されるとは限りません。ご注意ください。
FedEx | System Down